【コラム】日本大使館前ではなく世界70億人の胸に少女像を

「お姉さん、もう家に帰ろう」



▲文化部＝金潤徳（キム・ユンドク）次長

　今年初め、映画館街に旧日本軍の従軍慰安婦を描いた映画『鬼郷』旋風が巻き起こった時、見るべきかどうか迷った。「みんな知っている話」という思い上がり、「どうせ終わったこと」というあきらめがあったのだ。「『鬼郷』を見ながらポップコーン食べてはいけない」という熱狂的な観客たちの嫉妬（しっと）心も嫌だった。結局映画館に行ったのは、ある種の義務感からだった。7万5000人の市民が資金を出し合い、14年間かけて作った映画だ。ポップコーンは買わなかった。何も知らない14歳の少女ジョンミンが母親と別れてどこか知らない所に連れて行かれるシーンから胸が詰まった。恐怖と狂気、暴力にさいなまれ気絶するシーンでは両目を閉じた。あざだらけの両脚を谷川の水に浸した少女が「行くのですか　行くのですか　私は…」と歌った時、客席からはすすり泣きが聞こえた。

　359万人という通算観客動員数は奇跡のような数字だった。米国公開が実現し、少し前に日本でも上映を開始した。この涙はどこから来るのだろうかと思った。韓国映画『国際市場で逢いましょう』『延坪海戦』に続く「愛国マーケティング」の狙いが的中したのでも、旧日本軍の残虐行為に対する怒りでもなかった。それは申し訳ないという思い、恥ずかしさから来た涙だった。昨年12月、韓日間で旧日本軍慰安婦問題の合意が発表された直後だとということで、なおのことそうだった。取って付けたような謝罪、100億ウォン（約10億円）という笑えない賠償金に憤慨したが、「もう終わりにする時になったのでは」という本音があった。朴裕河（パク・ユハ）世宗大学教授の著書『帝国の慰安婦』をめぐる激しい論争は、その疲労感を露骨に現したものだった。経済協力・安全保障・観光など韓日関係が凍結状態になると、慰安婦問題の疲労感はピークに達し、明敏な戦略なしに感情でだけ対応してきた韓国政府は元慰安婦たちの話を十分に聞きもしないまま昨年12月に合意文を発表した。

文化部＝金潤徳（キム・ユンドク）次長

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