ライトを点けた携帯端末を掲げる香港のデモ参加者たち。携帯端末やインターネット、ＳＮＳは彼らの強力な武器だ＝９月２９日、香港（ロイター）


香港九竜地区モンコック（旺角）で、手製の鏡を警官隊に向けて掲げるデモ参加者。「私達はあなたの敵ではない」と書かれている（田中靖人撮影）

　米アップルは２１日、データ保存サービス「ｉＣｌｏｕｄ（アイクラウド）」が大規模なハッキング攻撃を受けたと明らかにした。中国のネット検閲を監視している米非営利団体グレート・ファイアは、「中国当局の関与」を指摘。
アイクラウドに保管されている、香港で続く大規模デモの写真や動画が中国本土で拡散するのを防ごうとしたとの見方を示した。中国政府は関与を否定している。
アイクラウドに保管されていた米人気女優らの私的ヌード写真が卑劣なハッカーによって流出する事件が起きたばかりだが、ほとんど同じ手口でデモ写真が狙われた。(SANKEI EXPRESS)

米監視団体が指摘

　グレート・ファイアが２０日に公式ブログでハッキングの事実を報告し、アップル側が「利用者の情報を手に入れようとする断続的で組織的な攻撃があった」と認めた。

　米メディアによると、ハッカーはユーザーネームとパスワードを推測するなどで利用者に成りすまし、アイクラウドのサーバーに侵入しようとする「中間者攻撃」を仕掛けてきたという。

　アップル側は「サーバーへの不正侵入はなかった」とし、データの流出を否定した。ヌード写真流出事件でも同じ攻撃が行われ、侵入を許したが、アップルは「セキュリティーが破られたわけではく、システムに問題はない」としていた。

　一方、中国外務省の華春瑩（か・しゅんえい）報道官（４４）は２０日の会見で「（ハッキングに）断固反対している」と述べ、政府の関与を否定した。

　これに対し、グレート・ファイアは、サーバーへのアクセスは中国から発信されていたと明言した上で、「中国本土のアイクラウド利用者は、香港のデモの写真や動画を共有している」と指摘。
写真や動画が拡散し民主化を要求するデモが本土に飛び火するのを恐れ、削除しようとしたとの見方を示した。

　グレート・ファイアによると、今回のような攻撃は今年に入って米ヤフーやグーグル、マイクロソフトのサーバーに対しても行われており、中国当局の関与が疑われている。

　グレート・ファイアは中国のネットユーザーに対し、ハッキング攻撃からデータを守るため、「『奇虎（チーホー）３６０』といった高いセキュリティー機能を備えたソフトを使うと同時に、アイクラウドの２段階認証を利用すべきだ」と助言した。

ｉＰｈｏｎｅ６発売日に開始

　一方、今回の攻撃は、アップルが中国本土で新型「ｉＰｈｏｎｅ（アイフォーン）６」を発売した今月１７日に始まっていた。
中国当局は、アイフォーンが米情報機関によるスパイ活動に利用される恐れがあるとし、セキュリティー対策の強化を要求。アップルがこれを受け入れ、他国より遅れて発売にこぎ着けたという経緯がある。

　このため、米ネットセキュリティー企業、ゼットスケーラーのマイケル・サットン副社長はニューヨーク・タイムズ紙に「アイフォーン本体のセキュリティーが厳しくなったので、クラウドのサーバーを狙った」と分析。
「中国政府が背後にいなければ実行できないサイバー攻撃だ」と非難した。

　もっとも、米女優ジェニファー・ローレンスさん（２４）らセレブの私的ヌード写真を盗み出したハッカーとは違い、今回の攻撃は失敗に終わっており、その卑劣な試みだけが暴かれた格好だ。

http://www.sankei.com/world/news/141023/wor1410230016-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/141023/wor1410230016-n2.html
http://www.sankei.com/world/news/141023/wor1410230016-n3.html